2008年10月15日

◆ ストリートビューと住居侵入罪

 Google のストリートビューは、私有地である社宅敷地に入って撮影することもあるという。これは法的には「住居侵入罪」にあたるようだ。その疑いが強い。 ────

 具体的な事例は、高木浩光のサイトにある。これは、ブリヂストン社宅や富士重工社宅の敷地内の私道に入って撮影した画像だ。
   → http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20081012.html
 では、このようなことは、「住居侵入罪」にあたるだろうか? 

 ──

 直感的には、「撮影するのはけしからんが、自動車で入るぐらいは構わないだろう。歩いて入ることだってあるし」
 と思うだろう。ま、常識的には、そうだ。
 もしこれが違法だとなると、宅急便の配達や、酒屋の配達や、郵便の配達も、違法になりかねない。(それらは正当性があるとしても)セールスマンがちょっと訪問しただけでも違法になりそうだし、新聞屋が料金を取ったついでに隣の部屋で新聞を勧誘しても違法になりそうだ。
 だから、これらのことは、常識的には合法であるはずだ。
 もちろん、Google のストリートビューも、(撮影しないで)通行するだけなら、合法であるはずだ。……常識で考えれば。

 ──

 ところが、である。この常識は、日本の法律では通用しない。日本の法律では、私有地の敷地に入ることは、違法である。このことは、最高裁で確定した。
 具体的な判決は、立川の自衛隊官舎におけるビラ配布事件だ。事件のあらましは、ここにある。
    → Wikipedia 「立川反戦ビラ配布事件」

 この判決について、「敷地」や「通路」という言葉で、あちこちを検索してみよう。(上記ページや他のサイト)
 すると、最高裁判決では、次のように判決されている。
  「敷地や通路に立ち入ることは、住居侵入罪にあたる」


 ここで、具体的には、次のものはアウト(違法)である。
  ・ 建造物内の通路
  ・ 門から玄関までの敷地
  ・ 庭


 ただし、次のものは、微妙だ。
  ・ (私有地内の)私道
    (今回はこれが相当する。)

 私道はどうか?
 多くの人が通ることから、「公共性が高い」と見なされれば、セーフ(合法)かもしれない。
 一方、「私道にするか、庭にするかは、住民の用途しだいである。どちらにでもなるから、あえて区別できない。ゆえに、私道もアウトだ」という見方も成立しそうだ。もしそうならば、私道を通る Google の撮影車もアウトだろう。

 私としては個人的には、「私道もまた敷地の一部だ」という見解に賛成したい。さもなくば、「私道は公道だ」ということになって、論理的に破綻するからだ。
 ま、「敷地に入ったから住居侵入にあたる」という判決は、メチャクチャだとは思う。だが、少なくとも、私道を「敷地」と見なすのは妥当だろう。
 そして、そこに、「敷地(私有地)に入るのは違法だ」という最高裁判決がかぶさる。
 結果として、「 Google の撮影車は住居侵入罪という違法行為をしている」ということになる。

 ──

 立川の自衛隊官舎におけるビラ配布事件は、自衛隊に入る反戦派(左翼)をいじめてやろう、という魂胆で生じたものだろう。だから検察はわざわざ長期間にわたって留置するという、ひどいいやがらせをした。そして、それと同じ心理で、最高裁も判決を下した。
 しかしながら、その判決が、一般市民の行動をも縛ることになる。そして、その判決は、Google をも縛ることになる。
 Google としては、とんだとばっちりかもしれないが、とにかく、(たとえ変な法律であるとしても)日本の法律体系に対して、Google は違法行為をしていることになる。

( ※ この点、私個人としては、心情的には違法になる側に同情したい。つまり、Google に同情したい。……とはいえ、「反戦ビラを配る人は違法で、Google は合法」というのは、不公平すぎると思う。とにかく、片方が最高裁で違法と見なされた以上、Google もまた違法と見なされざるを得まい。)
( ※ ま、屋内通路と屋外通路という違いはあるのだが、それは法的には大した違いではないだろう、というのが本項の趣旨。)
( ※ ついでだが、自民党の後援会報を、マンションのポストに投函する運動員がいたら、そいつも違法である。衆院選前には、ありがちだ。)

 なお、悪質さを言うなら、Google の方が圧倒的に悪質だ。なぜか?
 反戦ビラを配る人は、何も奪わず、ビラを与えるだけだ。Google は、何も与えず、情報を奪うだけだ。
 Google は情報泥棒だ。泥棒の一種。こっちの方が悪質です。明らかに。
 そもそも、Google は営利目的であり、他人のものを無断で盗んで金儲けをしているという点からして、明らかに泥棒と同じ心根であろう。
 


 [ 付記1 ]
 「おまえ、法律で遊んでいるんじゃないのか?」
 と問われたら、……
 「はい、そうです」
 と素直に認めます。   (^^);

 しかしまあ、法律談義というのは、すべてそういうものであろう。物事の本質をはずれて、損葉末節の法律談義で、違法か合法かを決める。もともとそういうものなんだから、そう理解するしかあるまい。
 法律の世界では、「真実か虚偽か」ということは、どうでもいいのである。たとえ嘘をついても、判決で勝利すれば、それで「勝ち」なのだ。O.J.シンプソン事件を見れば、そのことがわかる。

 [ 付記2 ]
 ストリートビューの違法性(個人情報保護法違反・住居侵入罪)で、国会質問する議員がいると面白いのだが。
 「ストリートビューには違法性があるか否か? 法務省の見解を求めたい」
 こう語る議員がいたら、とても面白い。なぜなら、法務省としては、どちらだとも答えられないからだ。
  ・ 違法だと答える → 「だったら Google をとっちめろ」と言われる。
  ・ 違法でないと答える → 法的整合性を問われる。法的に破綻する。

 ま、どっちだとも答えられないから、むにゃむにゃとゴマ化すしかあるまい。すると、立ち往生するハメになる。すると、議員のポイントになる。  (^^)

 この点からして、政府をとっちめることが議員のポイントとなるような、野党議員のみ、質問が可能だろう。
 誰か、やりませんかね? 
 
 [ 付記3 ]( 2008-10-16 加筆 )
 Google の違法性を問うのはいいが、やみくもに何でもかんでも違法性を問う、というのは、いただけない。小さな罪についてまで大上段に構えるのは、大げさすぎる。
 たとえば、車両通行禁止の道路に Google のストリートカーが進入した、という事例。
  → http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20081015.html
 これは、確かに違法だが、道路交通法違反にすぎない。交通違反切符を切れば済む程度の違法性だ。人権侵害にも当たらない。
 道路交通法違反でいちいち大騒ぎしていたら、交通信号の無視(赤信号で渡ること)はどうか? 横断歩道でもない車道を勝手に渡ってしまう、ということもある。こういうのをしょっちゅうやっている私なんかは、たちまち逮捕されかねない。  (^^);
 また、この交通違反は、組織的なことかもしれないが、責任はあくまで運転手にある。Google という組織に責任があるとは言えない。「交通違反をせよ」と明白に指示しているわけではないからだ。
( ※ せいぜいニンジンをぶら下げている程度だ。悪賢いかもしれないが、それ自体は違法ではない。「個人住宅を覗くのは当然だ」という明白な組織的違法活動とは違う。) 

 そもそも、ご本人はどうか。Google のストリートビューの画像をそのまま転載しているご本人もまた、違法行為の片棒を担いでいることになる。部分的に表札を隠してはいるが、住宅地の画像を自分のブログに直接載せていることには、大いに問題がある。
 ここでは「 Google が画像を公開しているから」という言い訳は通用しない。自分も違法行為の片棒を担いでいることになる。他人の小さな罪をあげつらうために、自分が大きな罪を犯していることになる。
(地図情報と住居画像を同時提供しているので、明白に個人情報の侵害を犯している。たとえば、その画像の住居を訪れて、住所氏名を特定することも、十分に可能だ。)
(なお、たとえ Google の違法性を示すためであるとしても、私の家の画像を勝手に掲載することは、断固、お断りします。掲載される側の身にもなって下さい。)

 結論。
 (1) 道路交通法違反のような小さな違法行為は、いちいち目くじらを立てることはない。「違法行為だ」と鬼の首を取ったようにあげつらう必要はない。

 (2) 自分のサイトに Google の違法画像を直接掲載することは、それもまた違法行為の一助に該当する。(リンクだけでも十分に画像を示せるのだから、自分のサイトに直接掲載する必要はない。……そもそも、そんなことをやらかすと、ページが重くなって困る。  (^^); )

 上記の二点について、留意してほしいものだ。(ご本人が Google といっしょに逮捕されたんじゃ、シャレになりませんからね。)
 
 《 注記 》
 どうも上記のご本人は、ストリートビューの問題点をよく理解していないようだ。
 われわれがストリートビューを問題視するのは、決して Google が憎いからではないし、違法行為をあげつらいたいからでもない。違法行為をする連中なら、真砂のように尽きない。泥棒なら掃いて捨てるほどいる。
 ストリートビューが問題なのは、それが人権を侵害するからだ。そして、人権の侵害というものは、金では解決がつかない心の痛みを与える。
 泥棒ならば、金を返してもらえば、元に戻る。しかし、いったん傷ついた心は、決して元には戻らない。漏洩した情報を元に戻しても、傷ついた人の心は戻らない。(前項で例示した×××バーガー事件が例だ。)
 こういう意味で、人権の侵害というのは、ただの泥棒のような経済犯と違って、決定的に悪質なのだ。まして、自分の金儲けのために他人の人権を侵害するというのは、ひどく悪質なのだ。だからこそ、われわれが問題視する必要がある。

 ここを理解しないまま、「道路交通法に違反したから犯罪者だ」などとあげつらうのは、本質を見失っている。単に悪質さだけを指摘しても、バーガー事件で騒いでいる2ちゃんねるの連中と同列になってしまう。
 とにかく、本サイトをちゃんと読んで、どこに問題があるかを、しっかり把握してほしい。「それは人権の問題なのだ」と。
 
( ※ 情報の漏洩なんて、それ自体はクソほどの意味もない。情報の漏洩を通じて人権が侵害されるから、とても大きな意味をもつ。こういう根源を理解することが大切だ。)



 【 後日記 】 私道からの撮影について
 ( 2008-11-23 )

 私道に入って撮影するということは、特に大きな問題点とはならないように思う。
 なるほど、そのことで「公道から撮影するので合法」という Google の主張は揺らぐことになるが、そもそも「公道から撮影するので合法」という主張そのものが成立しない、と私は考えるからだ。公道からだろうが私道からだろうが、どっちみち、個人住宅の撮影と公開は違法である。それが私の立場。
 ま、私道に入ることで、違法性は高まるだろうが、それは有罪を前提とした上で、罪の重さが高まるというだけだ。有罪性そのものは、撮影場所には関係ない、と思う。
 ちなみに、他人の個人住宅の室内を撮影することは、撮影場所が公道であれどこであれ、違法である。このことは判例で確定している。……似た例で言うと、露天風呂を山腹から望遠レンズで盗撮することは、山腹が公道上であっても、違法である。Google みたいな主張は成立しない。

 私の考えでは、ストリートビューの違法性の理由は、私道から撮影することではなくて、写真が地図情報と結びつくことだ。そのことで個人情報の漏洩となるからだ。地図情報と結びつかなければ、私道から撮影しても問題ない、と私は思う。
 実際、同じ団地の内部で私的に撮影している人は、たくさんいる。その人たちが Google と同じように悪質だとは言えない。彼らは撮影するが、地図情報といっしょに公開することはないから、悪質ではないのだ。
posted by 管理人 at 19:30| Comment(1) | Google | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本項は下記から移転しました。
  → http://openblog.meblog.biz/article/1268848.html

 ※ 古いコメントは、上記に記してあります。
Posted by 管理人 at 2008年11月04日 21:40
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